睡眠時無呼吸症候群 | 旭川なかの呼吸器科内科クリニック

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睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に無呼吸状態が繰り返される病気です。
いびきがうるさかったり、寝ているのに疲れが取れない方は要注意です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について

夜間に十分な呼吸ができなくなる病気です

医学的な定義では、「気道の空気の流れが10秒以上止まった状態」を【無呼吸】とし、無呼吸が1時間あたり5回以上、1晩(7時間の睡眠中)に30回以上あれば、睡眠時無呼吸とされます。
眠っている間に呼吸が止まると、睡眠中にも関わらず脳が起きた状態となり、身体に取り込まれる酸素量が少なくなります。
結果として、睡眠時間を確保しているにも関わらず脳と身体は十分に休息できないことになります。

睡眠中の無呼吸に自分自身が気づくことは少なく、ご家族などに指摘されてはじめて気づくというケースも珍しくありません。
そのため、検査や治療を受けていない潜在患者が多くいると推計されています。

この病気が恐ろしいのは、放置していると様々な健康リスクが高まるという点です。
たとえば、高血圧や糖尿病に代表される生活習慣病を合併する頻度が高いということが、近年の研究で明らかになっています。

原因は何でしょう?

1.気道(空気の通り道)が物理的に狭くなる「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)」

簡単に言うと、睡眠中に呼吸が出来なくなってしまうのは、気道(空気の通り道)が閉塞してしまうからです。

気道が閉塞してしまう理由の1つが「肥満」です。実際にSASの患者様全体の約60%に肥満が認められます。
ただし、SASは肥満の人に特有の疾患というわけではなく、痩せている人でも下顎が小さい人や扁桃腺が大きい人など、気道のスペースが圧迫されやすいタイプの人に症状が出る場合もあります。女性でもかかる病気なので油断は禁物です。

首が短い・太い

下顎が小さい小顔

歯並びが悪い

舌や舌の付け根が大きい

2.呼吸中枢の異常による「中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)」

このタイプは睡眠時無呼吸症候群全体の数%程度と言われています。脳から呼吸司令が出なくなる呼吸中枢の異常により、無呼吸状態が生じます。OSAと違って、気道に閉塞は見られません。

さらに、肺や胸郭、呼吸筋、末梢神経にも異常は見られないのが一般的です。
OSAの場合には気道が狭くなって呼吸がしにくくなるので、呼吸しようと努力しますが、CSAの場合は呼吸しようとする努力が見られません。
CSAに陥る原因は様々なことが考えられますが、心臓の機能が低下した方の場合には30~40%の割合で中枢型の無呼吸が認められると言われています。

睡眠時無呼吸の発作発生中に関連する病態の例

脳卒中

心臓発作

うっ血性心不全

脳炎(脳の炎症)

頚椎関節炎

パーキンソン病

自分でできるワンポイントチェック

クラスⅠ

軟口蓋、口狭、口蓋垂、口蓋弓が見える

クラスⅡ

軟口蓋、口狭、口蓋垂(一部)が見える

クラスⅢ

軟口蓋、(口蓋垂の基部)のみ見える

クラスⅣ

軟口蓋も見えない

上の図のⅢ・Ⅳのように口蓋垂が見えていない場合は、形体的に上気道が狭い可能性があります。体重増加などで首まわりに脂肪がついたりすると、より上気道を狭くして無呼吸を起こすリスクが高くなる可能性がある、
と考えておくと良いでしょう。もちろん、これらの特徴と一致するからといって即ち睡眠時無呼吸症候群(SAS)ということではありません。大切なのは、今SASではなくてもその将来的なリスクを知っておくことです。

どんな症状があるのでしょう?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な症状をご紹介します。
自覚症状がある・ないには個人差がありますので、もし可能であれば寝ている間のことをご家族などに聞いてみることをお勧めします。

いびき

睡眠中に無呼吸が繰り返し起きることで、特徴的な症状がみられます。いびきは、気道壁が震えることによって生じる呼吸音です。いびきが生じるのは気道が狭くなっているサインと考えて下さい。
SASではいびきを伴うことが多く、無呼吸から呼吸が再開する時に大きないびきが起こるのが特徴です。習慣的にいびきをかく人は注意が必要です。
また、朝起きたときに口が乾いている、頭が痛い・ズキズキする、すっきり起きられないという症状が思い当たる場合も同様に睡眠時無呼吸症候群の可能性があるので早期の受診をおすすめします。

熟睡感がない・日中に強い眠気を覚える・集中力の低下

睡眠中に無呼吸が繰り返し起こるために、脳が頻回に目覚めてしまいます。寝ているつもりでも、脳も身体も断続的に覚醒した状態になるので、十分な休息が取れていないのです。
そのため、日中の倦怠感や強い眠気、集中力の低下が引き起こされます。交通事故を起こす危険性もあるため、運転免許証の更新ではSASの有無が確認されます。

夜間のトイレ回数が増える

通常の場合は、寝ている時は副交感神経が優位となります。しかし、無呼吸によって脳が覚醒して休めない状態になると、交感神経が優位になります。交感神経が優位になった結果、尿が生成されやすくなります。
また、睡眠中の無呼吸は心臓に負担をかけるため、利尿ホルモンが持続分泌されます。このため夜間のトイレ回数が増えてしまうと言われています。寝汗をたくさん書いてしまう場合も要注意です。

治療法について

生活習慣の改善を含めるため、多くの場合SAS治療は長期に渡ります。

肥満気味の方は首や喉まわりの脂肪が気道を狭くしている可能性があるため、減量も治療の一環になります。 鼻づまりなど、鼻の諸症状で鼻呼吸がしにくい場合には、まず鼻症状の改善から取り組む場合もあります。

治療方法には、対症療法(症状を緩和させるもの)と、根治療法(根本的に原因を取り除くもの)に大別されます。 いずれも個々の患者様に合わせて、重症度や原因に応じた最適な治療方法が適用されます。

CPAP治療

睡眠中に鼻に取り付けた専用のマスクから気道に空気を送り続け、気道を開存させておく方法です。
世界的に安全性と治療効果が確認されている方法であり、現在のところ睡眠時無呼吸症候群において中~重症の患者様に対してはこの治療法が第一選択となります。 健康保険でCPAP治療を行うには、最低3ヶ月に1回の定期外来受診が必要となります。

外科的手術

気道を塞ぐ部位を手術で取り除く根治療法です。
SASの原因がアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効な場合があります。
軟口蓋(のどちんこ)の一部を切除する方法もありますが、治療効果が不十分であったり、手術部位が数年後に瘢痕化(はんこんか・隆起などを伴った傷跡)してSASが再発することが少なくありません。
全ての患者様に適用となる治療ではないため、専門医との綿密な相談が必要となります。

歯科装具(マウスピース)

軽度な症状に適した治療法です。
マウスピースを使用して、下顎を上顎よりも前方に出すように固定することにより、上気道を広く保っていびきや無呼吸の発生を防ぐ治療法です。

生活習慣病との関係

睡眠時無呼吸症候群(SAS)には、様々な生活習慣病が合併します。

睡眠は量的にも質的にも満たされていることが望ましいのですが、SASによって適切な睡眠がとれていないと 身体全体に関わる生活習慣病の発生や状態の悪化に影響を及ぼすようになります。

無呼吸が断続的に起こることにより、寝ている間に酸素不足が繰り返し起こることになります。
酸素不足の状態になると、酸化ストレスによって交感神経が亢進した状態となり、血圧が不安定になります。
糖尿病の危険性や動脈硬化も多くなり、不整脈を起こすということもあります。
具体的な機序はまだ解明されていないものもありますが、特にSASによる「間欠的低酸素血症」と「睡眠の分断による交感神経の亢進」の2つが大きく関与していると考えられます。

予防について

体重管理
しましょう!

どんな生活習慣病にも言えることですが、適正体重の維持が大切になってきます。

特に太り過ぎないことが重要です。
SASの発症には、喉や首周りの脂肪沈着が大きく関与 してきます。
今は大丈夫でも、顎の大きさによっては、少しの体重増加がSASに繋がる可能性もあります。
肥満気味の人は適正体重を目指すように心がけましょう。
既に 治療中の人にとっては、痩せることは治療の一環 となります。

お酒に注意
しましょう!

酒を飲んだ日はいびきをかいて寝ているような気がする…。こんな経験はありませんか? アルコールは筋肉を弛緩させる作用があるため、首や喉の周り、気道を支える筋肉も弛緩します。 そのために気道が狭くなり、いつもはないいびきが生じることになるのです。

寝る時には筋肉が緩むのが普通ですので、そこにさらにアルコールが加わると、無呼吸に陥るリスクを高めることに繋がります。 寝酒を習慣にしている方は、一度習慣を見直して控えるようにしてみましょう。

口呼吸から
鼻呼吸へ!

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など、鼻の症状がある場合、 鼻呼吸がしにくいために気付かないうちに口呼吸になっているケース があります。

口呼吸は、鼻呼吸に比べると喉頭が狭くなるため、気道が閉塞しやすい状態になります。

口呼吸はSAS以外にも様々な病気との関連が示唆されていますので、口呼吸をしている方は耳鼻咽喉科の受診をして鼻の症状の改善に努めましょう。

寝る時の姿勢を
工夫しましょう!

仰向けよりも、横向き姿勢の方が気道の閉塞を軽減できる場合があります。 普段仰向けでいびきをかく方などは、抱きまくらなどを活用して 横向き姿勢で寝られる工夫をしてみましょう。

睡眠薬を服用している場合、 睡眠薬の多くは無呼吸症状を悪化、あるいは助長させる傾向があります。 自己判断で服用するのは避けて、主治医とよく相談して服用するようにして下さい。