気管支ぜんそく・咳ぜんそく | 旭川なかの呼吸器科内科クリニック

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気管支ぜんそく・咳ぜんそく

熱もないのに喉がイガイガしたり、一度咳が出ると止まらなかったり、
咳止めが効かなかったり、痰がからむことが多かったり…
このような症状にお悩みの方は、ぜんそくを疑った方が良いかもしれません。

「ぜんそく」とはどんな病気なのでしょうか?

「ぜんそく」の元は気道の炎症です

ぜんそくの人の気道は常に炎症を起こしていて、健康な人に比べると気道が狭くなって空気が通りにくくなっています。 気管支ぜんそくには「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が混じりますが、咳喘息は咳のみというのが特徴です。

常に炎症を起こしていることにより気道がとても敏感になっていて、正常な気道であれば平気なホコリやタバコ、ストレスなどのわずかな刺激にも反応して狭くなり、発作が起きてしまいます。

そのため、ぜんそくの治療は発作を起こさないために気道炎症の治療を中心に行います。

気道の状態について

健康な人の気道

健康な人の気道状態は、平滑筋の縮みがなく、 空気の通り道である気道が広い状態です。

ほこりや細菌、ウイルスなどを排除するフィルターの役割を担っている気道上皮の内側にある粘膜もむくんでいないので、空気が十分に通る状態なのです。

喘息の人の気道

症状がないときも炎症は起こっており、気道上皮が剥がれ落ちて敏感になっています。
粘膜がむくんでおり、気道が狭くなっています。

炎症がある気道に刺激が加わると、気道が狭くなり痰などの分泌物が増えます。
そのため呼吸が苦しくなり咳をするたびにヒューヒュー、ゼーゼーという音が聞こえたり、激しく咳き込んだりしてしまいます。

現代人におけるぜんそく

「ぜんそく」の患者様は年々増加しています

日本ではぜんそくの患者様は増えており、現在では400万人を超えています。
1960年代では子ども・大人ともに1%前後でしたが、最近の調査では子どもで約6%(6倍)、大人で約3%(3倍)となっています。
要因としては様々なことが考えられます。
密閉度の高い家屋構造になったことによるアレルゲン(アレルギーの原因となるもの)の増加、大気汚染、食品や住宅建材に含まれる化学物質、労働環境の変化による過労やストレスの増加、清潔すぎる環境(衛生仮説といいます)などが挙げられています。

ひどくなると死亡してしまう大変恐ろしい病気なのです。

ぜんそくの症状

ぜんそくには、咳や痰(たん)、息苦しさ、「ゼーゼー」や「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)など、様々な症状があります。最近では咳だけのいわゆる咳ぜんそくも増加してきています。

胸の痛みや、喉に違和感を覚えるなどもぜんそくの症状のひとつです。
このような症状を治療せずに放置してしまうと、気道の炎症が悪化してより重い症状に繋がります。早めの受診をお勧めします。

息苦しい・咳き込む

呼吸時にゼーゼー・ヒューヒューという音が出る

夜間や早朝に喘鳴の症状が出やすい

走ったり運動したあと息苦しくなる

喘息症状で夜中に目が覚める

発作はどんな時に起きやすいのでしょう?

天気が良くないとき・天気が変わりやすいとき

季節性のものとして、秋の台風の多いシーズンには外来患者が約2倍に増加するなど低気圧の影響がみられます。また、6月の梅雨の時もそれなりに悪化がみられ、
天候、あるいは低気圧、気圧の変動、雷が鳴る時など様々な原因があります。秋には夏に増えたダニの死骸が舞って、そのダニを吸入することによってぜんそくが悪化するともいわれています。

気温差が激しいとき(季節の変わり目など)

温度の変化が激しいために体調を崩し、風邪をひきやすいということも多いと思いますが、この風邪をひくということも発作の原因と考えられています。 さらにアレルギーの面からみると、
たとえばダニは従来、夏から秋にかけて数がふえることがわかっており、そのためダニが原因の喘息は、この季節に多いといわれています。

風邪や疲れが溜まっているとき

過労や過度のストレスを感じると、自律神経やホルモンの乱れによって気道が収縮し、喘息の発作を起こしやすくなります。溜まった疲れやストレスが引き金となって、大人になってから初めて発症するケースも増えています。
ストレスにより免疫力が低下したり自律神経を乱したりすることが原因の一つとなります。またこれらの原因以外にも、風邪やインフルエンザなどの感染症や飲酒、運動が喘息の誘因になることもあります。

タバコ・線香の煙、強い臭いなど、発作を引き起こす刺激に触れたとき

日常生活のちょっとした刺激が引き金となって、喘息の発作を起こすことがあります。例えばタバコの煙、排気ガス、工場の排煙などで汚染された空気などです。最近は、中国大陸由来のpm2.5の濃度が上昇することも原因の一部です。なかでもタバコは一酸化炭素やニコチンをはじめ、200種類以上もの有害物質が含まれているため、気道の粘膜の炎症を促進させ、喫煙する人はもちろん周囲でその煙を吸う人も喘息の発作を引き起こしやすくします。

どうやったら予防できるのでしょう?

発作の予防は誘因(刺激となるもの)を知るところから始まります

気道が炎症により敏感になっているため、わずかな刺激でも発作が起こってしまいます。

誘因には、ダニやホコリなど、吸い込んでしまうとアレルギー反応を起こす「アレルゲン」と呼ばれるものと、 タバコの煙などのアレルゲン以外のものもあり、様々となっています。

発作が起こる時には、これらの誘因がいくつか絡み合っているケースがほとんどです。 従って、まずはこれらの誘因をできるだけ遠ざけることが発作の予防に繋がります。

主なアレルゲン

アレルゲン以外の誘因

ぜんそくはどうやって検査するのでしょう?

検査にはいくつかの種類があり、症状や年齢、目的に合わせて、単体、もしくは複数を組み合わせて検査します。

呼吸機能検査(スパイロメトリー)

スパイロメーターと呼ばれる機械を使用して呼吸機能を調べる検査を【スパイロメトリー】といいます。ぜんそくの基本的な検査として知られています。
検査方法はシンプルで、息を思い切り吸い込んだ後に力いっぱい吐きます。息を思い切り吸い込んだ時の肺活量(努力性肺活量)、吐き始めから吐き終わりまでの時間、吐くスピードの3点を機械が測定します。
最初の1秒で吐き出した空気の量を【1秒量】と呼び、この値がぜんそくの重症度の基準となります。ぜんそくを持っている場合、肺活量・1秒量は正常値より低くなる場合があります。

呼気一酸化窒素(NO)濃度の測定

10秒間、息をゆっくり吐くだけの簡単な検査なので、5歳を過ぎたら検査が可能です。
気道上皮に炎症があると一酸化窒素(NO)が炎症の程度に伴って産生されます。20ppb以上で喘息の疑い、30ppb以上だとほぼ確実です。

気道過敏性試験

少々つらい検査になるかもしれませんが、発作を起こしやすくする薬を使用して、気道の過敏の程度を測定します。どのくらいの濃度で発作が起こるかを診察して、重症度を判断していきます。
重症な人ほど気道過敏性は高く、治療すると低くなります。

血液検査

どのアレルゲンに対してアレルギー反応が起こりやすいかを確認するテストです。採血した血液とアレルゲンを反応させて、抗体が検出されるかどうかを観察します。
RAST法とMAST法の2種類があり、RAST法では6段階でアレルギー反応の強さを診ます。MAST法では、1回で26種類のアレルギーについて検査することができます。

皮膚反応テスト

血液検査と同様で、特定のアレルゲンに対してアレルギー反応が起こりやすいかどうかを確認する検査です。皮膚にアレルゲンエキスをつけ、反応を診ていきます。
かゆみや腫れといった症状が出た場合、その物質がアレルゲンであると特定できます。

胸部レントゲン検査

呼吸器疾患の中には、ぜんそくと同じような症状を持つものもあります。そのため、出ている症状がぜんそくによるものなのか、もしくは他の呼吸器疾患によるものなのかを判別するために、
胸部レントゲン検査を行います。また、肺炎などの合併症が出ていないかどうかも同時に診ていきます。

その他の検査

心電図検査、心エコー検査、胸部CT検査、気管支鏡検査などを必要に応じて行っていきます。

ぜんそくの薬について

「発作を鎮める薬」と「発作が起こらないようにする薬」があります

ぜんそくにおいて、発作を鎮めることはもちろん、発作が起こらないように予防することもとても大切です。
ぜんそくの治療薬には起こってしまった発作を鎮める【発作治療薬】と、発作が起こらないように毎日継続する
【長期管理薬(コントローラー)】の2種類があります。

まずは、発作が起こらないように毎日継続する【長期管理薬(コントローラー)】が基本となります。

吸入薬が主流です

ぜんそく治療薬の形状は、吸入薬、内服薬、貼り薬、注射薬など様々となっていて、目的や患者様のお好み・年齢などに応じて使い分けがされます。
その中でも、薬剤が気道の炎症部位に直接届き、少量で効果が得られる吸入薬が主に用いられています。
吸入薬には、ドライパウダー製剤(粉)、エアゾール製剤(薬剤噴霧)、液体を霧状にして吸入する電動ネブライザーなどのタイプがあります。

発作が起きたときには

ぜんそくの発作が起きてしまった場合には、速効性がある発作治療薬を使って発作を鎮めることが最優先です。
発作治療薬を使っても症状が改善しなかったり、苦しくて横になれないほど重度の発作の場合には救急外来を受診しましょう。
喘息症状や発作治療薬の使用が週1回以上あれば「コントロール不十分」とされています。発作の頻度などを医師に伝え、喘息の長期管理について相談しましょう。

発作治療薬について

短時間作用性吸入
β2刺激薬

速効性があり、気管支を拡げる作用が強く、 ぜんそくの発作時にすぐに呼吸を楽にしてくれる吸入薬です。

噴霧式の器具の場合、吸入補助器具(スペーサー)を使うと、そのまま吸入するより効果が高くなります。 ネブライザーで吸入する場合もあります。

吸入しても症状の改善が不十分であれば、20分おきに吸入します。
もし 3回吸入しても呼吸困難がある場合には、病院を受診しましょう。

テオフィリン薬

テオフィリン薬とは、 炎症を抑える働きと、気管支を拡げる働きの両方を持つ薬です。

ゆっくりと効く徐放薬(効果がゆっくりと放出されるように作られている薬)が長期管理薬として用いられますが、速効性のある内服薬もあり、 ぜんそくの発作治療薬として使用されます。

発作で病院を受診した際には、注射薬が使われることがあります。

経口ステロイド薬

経口薬(内服薬)はぜんそくの発作時に使用します。

β2刺激薬ほどの速効性はないものの、 炎症の悪化を防いでぜんそくの発作を鎮める効果が高い薬です。

β2刺激薬などを用いても発作がおさまらない場合や、中程度以上のぜんそく発作が起こった場合に使用します。 症状によっては、発作後数日間続けて服用することもあります。

抗コリン薬

「コリン」とはアセチルコリンのことを意味していますが、アセチルコリンは身体の様々なところで活躍しています。 神経と神経の橋渡しをし、さまざまな臓器に作用しています。

自律神経(副交感神経)から放出される、 気管支を収縮させる物質(アセチルコリン)の働きを抑えて、気道を拡げる吸入薬 です。

短時間作用性β2刺激薬と一緒に使われることがあります。

治療をやめると炎症が悪化します

現在のところ、ぜんそくを完全に治癒できる薬は残念ながらありません。
そのため、ぜんそく治療のゴールは「発作が起こらない状態を長期間続けること」となります。

発作が起こらない状態を長期間続けるためには、ぜんそくの原因である気道の炎症を抑える治療を毎日続けることがとても大切です。
炎症の治療を行うにつれ徐々に咳が出なくなり、夜は良く眠れるようになります。
しかし、少し良くなったからといってすぐに薬を止めてしまうと、気道の炎症が再び悪化して、またすぐに発作が起きてしまいます。
自分での判断は避け、医師の指示に従ってきちんと治療を続けることが何よりも大事です。

ぜんそくを予防しよう

まずはストレスをためないこと!

ストレスがたまると自律神経に乱れが生じるのはよく知られているところですが、自律神経に乱れが生じると体の機能を調整する体内物質のバランスが崩れてしまうことになり、ぜんそくが悪化しやすくなります。

休養を十分に取り、趣味や好きなことをする時間を意識的に増やすなど、ストレスを上手に発散することが大切です。

タバコは厳禁です!

タバコの煙は気道を刺激するだけではなく、ぜんそくの原因である炎症そのものを悪化させてしまいます。
また、喫煙を続けると、吸入ステロイド薬の効きが悪くなることも分かっています。
吸入ステロイド薬はぜんそくの基本治療薬であるため、この薬の効きが悪くなってしまうと症状をコントロールすることが難しくなってしまいます。

タバコは自身で吸う煙よりも流れ出る煙(副流煙)の方が有害物質を多く含んでいるため、タバコの煙があるところは極力避けましょう。
また、家族など身近な人には、できるだけ近くでは吸わないように伝えておきましょう。

十分な睡眠で疲労回復を!

睡眠不足で疲労がたまってしまうと体力回復が十分ではなくなり、風邪をひきやすくなったり、アレルゲンに対してより敏感になってしまうことがあります。
適度な運動や入浴と組み合わせて、質の良い十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。

風邪をひかないように注意しましょう!

ぜんそくの方は気道が常に炎症を起こしていますが、風邪・インフルエンザなどによってさらに炎症が強くなって刺激を受けやすくなり、ぜんそくの症状が悪化してしまいます。
うがいや手洗いを心がけ、風邪が流行る時期にはマスクを着用するなどの予防策が大切です。

適度な運動を!

運動誘発性ぜんそくの方はどうしても運動を避けてしまいがちですが、治療を毎日きちんと行っていて症状が安定していれば、適度な運動で心肺機能と基礎体力をアップすることにより、発作がおこりにくい体になります。
運動前に必ず準備運動をして、冷たい空気に触れる気温の低い朝などは避け、冬場の空気が乾燥している時期にはマスクを着用するなどの注意が必要です。

室内環境を整えてアレルゲンを排除しましょう!

アトピー型ぜんそくにはアレルゲン排除が有効です

アトピー型ぜんそくは、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)を吸い込むことによって発作が起きてしまいます。ダニやホコリ、カビ、ペットの毛、花粉など、身の回りのアレルゲンを出来る限り減らし、
発作が起こらないようにすることが大切です。掃除・換気をこまめに行って、室内の空気をきれいに保つ習慣をつけましょう。

こまめな掃除を!

まずはアレルゲンとして最も多いダニの棲家となりやすいもの(特に布製のもの)はなるべく置かないようにすることがポイントです。
動物の毛やフケなどはそれ自体がアレルゲンとなりますが、ダニが増える原因にもなりますので、毛や羽のあるペットを飼うのは避けることをお勧めします。
ホコリやカビなどは、エアコンのフィルターや家具の隙間など、見過ごしがちなところに発生しやすくなっていますので、定期的にチェックしてみましょう。